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    勝目梓著『棘』読了。

    文藝春秋の文芸雑誌『オール讀物』の2001年3月号から掲載されたものを単行本にまとめたもの。

    「雪の夜」(「甘い棘」を改題) 2003.3
    「露天風呂」 2003.5
    「人助け」 2001.3
    「遺品」 2001.7
    「空き家」 2002.5
    「悪食」 2001.11
    「視線」 2002.10
    「夢の中」(「夢の中で」を改題) 2003.11
    単行本化 2004.2文藝春秋刊

    出版社/著者からの内容紹介
    いまは亡き「あのひと」の気配が、生きるわたしの官能を昂ぶらせる―。亡き恋人の母との一瞬の交情、妻が体を重ねるたびに漂わせる亡き前夫との記憶、一晩を過すことで、死者への復讐を果たそうとする女、思春期から抱きつづけた義母への儚い想い…。性愛の深遠を余すところなく描いた、大人のための短篇集。

    感想
    夫の死や妻の死など死をテーマにした8つの作品。
    「雪の夜」は、17年前の思い出を主人公の男が回想する形式。
    結婚間近まで行った女性が突然亡くなってしまう。その後も女性の母親とは電話でのやりとりや泊りがけで家に遊びに行ったりと交流が続く。そして彼女の1周忌の雪の夜についにというお話。
    この話を含めて心に刺さった甘い棘が抜けないで残り、余韻に浸れる。

    棘 (文春文庫)
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    勝目梓著『夢追い肌』読了。

    1979年にグリーンアロー出版社より刊行された短編集。

    出版社/著者からの内容紹介
    底なしのエロスに溺れる男と女
    再会した初恋の相手との性戯を描く表題作ほか全8作の官能短編集

    20年ぶりに初恋の相手と再会した男と女。2人はそのままラブホテルに。鎮守の森での初体験と熟れきった性戯が交錯する表題作。憧れの映画スターのポスターをそれぞれ壁に張り、セックスを楽しむ2人の意外な秘密を描く「似顔絵セックス」など、大人の果てしないエロスを絶妙な筆致で表現した官能短編集。

    目次
    夢追い肌
    別れは初夜に
    肉の交信
    肉の輪舞
    夢よさらば
    バイバイ・ブルース
    騒ぎの果て
    似顔絵セックス
    解説 成田守正

    感想
    8作の中で面白かったのは、妻と愛人に最近同じような身体的特徴があることに気づいた男が、愛人の彼氏と妻にも同じようなつながりがあるのではと感じある実験を試みる「肉の交信」
    スナックで出会い仲良くなった女性に年上の愛人と別れたいがなかなか別れられないと言われ、その理由が愛人は腋や股間の毛に性的興奮をするが妻は無毛症だという眉唾なもの。妻が無毛症でないと解かれば別れられるので調査して欲しいと頼まれた男が主人公の「夢よさらば」
    堅物で真面目な妻に不満を抱える主人公が、知り合いからもらった山羊の目という香港みやげの性具を使ったことから妻が意識して夫婦の営みに積極的にならなかった理由を知り、そのことで事件を起こし刑事に取調べを受ける口調で綴られる「騒ぎの果て」の3作。

    どの物語も意外に素直な主人公が一癖も二癖もあるキャラクターの術中にまんまとハマっていき、オチも普通の官能小説のように分かりやすくなっていないので想像しながら飽きずに読める。どの主人公も、カラッとしていて騙されたりしてもあまり恨んだりしないでまあしょうがないかみたいに考えるところもジメッとしないでいいかな。
    好きなところは、「夢よさらば」の無毛症だと言われている妻に対して男が、視線を送り目が合いそうになるとそらしたり、声をかけられても逃げたりして、魅力的な年上の人妻に一目惚れしてしまったことに罪悪感を持ちつつも想いを止めることができない純情な若い男を演じ落とそうとするころ。ありがちだけどワクワクしながら読めてよかった。ここだけで1冊分読みたい。物語終了後の2人は繋がりがなくなったのかそれとも続いているのか。
    あと作中で主人公が「バイオレンスとポルノをくっつけたような小説はセンスが悪く、色恋の沙汰は洗練されたやり方を選ぶべきなんです。」と語るなど著者の自虐ネタが含まれていたりして面白い。

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    関連
    エロゲとか 『カレンダーにない日』 勝目梓
    勝目梓著『カレンダーにない日』読了。

    文藝春秋の文芸雑誌『オール讀物』の2007年8月号から掲載されたものを単行本にまとめたもの。
    「呼び水」 2007.8
    「相棒たち」 2007.12
    「カレンダーにない日」 2008.3
    「星夜」 2008.6
    「ダブルベッド」 2008.9
    「愛人」 2008.12
    「夕映えの宴」 2009.3
    「薄日」 2009.7

    内容
    定年退職後に房総勝浦に移住してきた2組の熟年夫婦の再生の物語です。小説家を目指す夫と元教師の夫婦、木工に目覚めた夫と元編集者の夫婦は30年来の友人付き合いで、しょっちゅう4人だけでパーティをしている。そんないつものパーティの席上、応募原稿の感想を述べ合うとき、ふとした一言が思わぬ波紋を呼び起こすことに……。人間なら必ず訪れる“老い”をテーマにハートウォーミングな世界が展開します。著者の新境地か。

    感想
    夫婦仲は円満だが、お互いを異性としては見れなくなっている仲の良い2組の夫婦が、お互いのパートナーを交換してみることで何かが変わっていくのではないかと考え、それが今までの夫婦関係を見直すきっかけになる。
    主人公は、作家デビューを夢見る塚越淳二で神経質な性格という設定だが、特別嫉妬に狂うというような描写もなくカレンダーのない日に自分の妻が相手の家から帰ってくると多少のジェラシーを感じるくらい。そしてその夜は妻の女性としての部分を強く感じ倒錯した欲望をぶつける。といいつつも両夫婦とも終始穏やかで相手を尊重しあって物語が進んでいくので生臭さはないしある種達観したような感じ。
    はじめは、パートナー交換という4人での閉じられた関係で進んでいくのかと思っていたら昔の仕事仲間が出てきたことで夫婦という関係に拘る必要があるのかというところが出てきて面白い。
    それから男性同士はパートナー交換について相手に悪いと思い、話せないでいるのに対し女性側は、「自分の夫としている時も相手の男性を思い浮かべるような淫らな部分が自分にはあってそのことを考えると燃える。」というようなことをあっけらかんと話しあうところなどが対照的で興味深い。

    あと主人公が、好きな女性の飼い犬になって生活を見守るタイトルズバリの松浦理英子著『犬身』に寝取られ的展開があるみたいなんで今度読んでみようと思う。

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    由布木 皓人著『姉の脇の下の窪み』読了。
    タイトルに引かれ手にとったが元は2001年に双葉文庫から刊行された『美姉・蜜あそび』を改題したものらしい。
    イラストも元のものは官能小説によくあるような女性の下着姿だがこちらは綺麗なデザインのものになっている。
    元はこんな(DMM電子書籍)
    きると

    時代は戦後間もない頃で、主人公は小学3年生の少年(加賀広志)
    隠れんぼでとっておきの隠れ場(お屋敷の便所脇)に隠れていると屋敷の方から足音が聞こえて便所に女(加代子)が入ってくる。便所の掃き出しの窓からビクビクしながらも好奇心でじっと覗いているが女性は排尿をせずチリ紙で股間を拭きだし奥にまで入れてしまう。女がチリ紙を出すと白っぽい液が付着していた。
    少年はこの日のことが忘れられずなんども便所覗きを繰り返し自慰も覚えていく。そしてある日いつものように隠れていると屋敷の主と加代子の行為を見てしまう。泣きながら2人を覗くことしかできなかった。その日排尿をしないのにチリ紙で股間を拭う事の意味を少年は知る。
    ここまでが第一章。

    二章では中学2年生になった広志が過去の加代子との間に起こったことを語る。
    そして19歳の姉(啓子)の眠っている間に部屋に忍び込んでアソコをのぞこうとするがバレてしまってなど。

    他にも薬局の未亡人や英語の教師など基本的には年上の女性がヒロインとして出てくる。
    主人公は、女性の母性本能をくすぐる質なのか夜這いなんかをしても相手は拒もうとはしないので基本的には和姦というかみんな主人公にはあまあまです。
    主人公は、エピローグでは33歳になっているが性描写があるのは大学生まで。
    薬局の未亡人がなかなか良かった。後は姉もいいけど母も出てくればさらに良かったかな。

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